介護士の仕事において食事介助は難易度が高いと言っても良いでしょう。なぜなら、高齢者の食事の介助は正しく行わないと危険がともなうからです。高齢者にとって食は一日の楽しみの中での割合で多くを占めていると言われています。しかし、食べるという行為は年を取るにしたがって様々な理由で困難になってしまいます。例えば、歯の減少による咀嚼の変化や筋力の低下による嚥下機能の低下、加齢による唾液などの分泌物の減少などが挙げられます。これらの結果、高齢者の食事中の事故として多いのが誤嚥です。一度誤嚥を起こすととても苦しいため、その後の食事が怖くなり、楽しい食事が苦痛なものとなってしまいかねません。
高齢者が健やかに、楽しく過ごしてもらえるように介助するのが介護士なのであれば、介護士は高齢者の体の仕組みについて正しく理解し、根拠に基づいた介護を行うべきです。まず、義歯を使っている高齢者には正しく義歯を装着できているか確認し、しっかり咀嚼できる環境を整えなければなりません。上半身はできるだけ立たせて、食事を飲み込む時に気道に入らないように、食べる時の姿勢を工夫します。食事を口の中に入れる前に飲み物や汁物で口の中を湿しておくことも重要です。できるだけしっかり咀嚼してもらってから嚥下を促しましょう。食事時によくむせる方には、飲み込む時に少し下を向くようにしてから飲み込むように促すとむせにくくなります。これらは、高齢者の食事介助の基本です。全て高齢者の生理学に基づいたものですが、これを行ったからと言って、誤嚥が起こらないとは言い切れません。したがって、食事の介助中は高齢者の変化を察知できるように、観察を怠らないことも大事な介護の仕事です。